アセビ

ツツジ科(Ericaceae) アセビ属(Pieris) 学名:Pieris japonica 別名 アセボ、アシビ、アセブ、アセミ、アセモ、馬酔木、安志妣

1~6mの低木または小高木。直径5~10㎝になる。山形・宮城県以南の本州、四国、九州、中国に分布する。山地の日当たりが良く、尾根ややせ地、岩場に普通。アカマツ林や中間温帯に多い。樹皮は灰褐色で、縦に裂け目が入り、少し捩れるため、少しネジキに似る。若い枝は緑色で、少し稜がある。はじめ短毛が密生するが、のち無毛になる。冬芽は卵型。葉は互生で、先寄りで幅広くなる形になり、枝先に集まってつく。葉身は長さ3~10㎝で、幅1~2㎝の倒披針形または長楕円形。先端は鋭くとがり、基部は次第に細くなる。淵の上半部には浅い鋸歯があり、少し波打つ。革質で、表面は光沢のある濃い緑色。裏側は淡緑色。表面の主脈上に短毛があるほかは無毛。葉柄は長さ3~8㎜で、時に赤みを帯びるが、帯ないものの方が多い。展葉したばかりの新葉は赤みを帯びる。葉脈の網目がややへこんで見える。花は2月下旬から5月に咲く。枝先の葉脈から長さ10~15㎝の円錐花序をだし、白色の花を多数つける。花序は垂れ下がり、花は下向きに咲く。花冠は長さ6~8㎜の細いつぼ型で、浅く5裂する。おしべは10個で、花糸の基部には毛が生えており、葯にはとげ状の突起が2個ある。めしべは花冠とほぼ同じ長さで、子房には毛がない。萼は5つに深く裂しけ、緑色や赤色など変異が多い。果実は蒴果で、直径5~6の扁球形で、上向きにつく。9~10月に褐色に熟し、5つにさける。先端に長い家中が残り、種子は長さ2~2.5㎜。反日蔭、水はけのよい肥沃な用土を好む。3~4月または9~10月が植え付けの適期。花期が終わった後に刈り込んで樹形を整える。乾燥に弱いので天候に合わせて灌水する。馬が誤って木の葉を食べてしまうと倒れてしまうため馬酔木と書く。Pierisという学名は文芸、学術を保護するPieridenの名からとられた。有毒のためシカが食べず、林床によく残る。アセビは万葉の時代から親しまれ、文学シーンでもよく題材として取り上げられる。馬酔木は古典植物の一つで、万葉集に十首見える。馬酔木なす栄えし君、と詠まれるように、古代は賀の植物であり、栄の枕詞であった。
[文学]
池水に 影さへ見えて 咲きにほふ 馬酔木の花を 袖に扱入れな  大伴家持
花どきの あしびにつきの まさやけく 白白にほふ 木下くぐりつ  岡麓

春日野の 諸木の若葉 いろいろに もゆるがなかの あせぼ白花  香取秀真

のぼり来し 比叡の山の 雲に濡れて 馬酔木の花は 咲きさかりけり  斉藤茂吉

花馬酔木 春日の巫女の 袖触れぬ  高浜虚子

春日野や 夕づけるみな 花馬酔木  日野草城

馬酔木より 低き門なり 浄瑠璃門  水原秋櫻子

月よりも くらきともしび 花馬酔木  山口青邨

染めあげて 紺うつくしや 夕馬酔木  原コウ子

花あしび 朝の薬に 命継ぐ  角川源義

花あしび かづきて鹿の子 くぐり出づ  阿波野青畝

奈良眠し 馬酔木の花の 落ち溜り  右城暮石

指さぐる 馬酔木の花の 鈴の音  沢木欣一

馬酔木咲き 金魚売り立つ 風の村  金子兜太

あしび咲く 昼のさびしき 水田べり  角川春樹

こころみに 足袋ぬぎし日や 花あしび  林翔

宵長き 馬酔木の花の 月を得し  野沢節子

邪馬台の 春ととのへり 花あしび  小原菁々子

囀に 馬酔木は鈴を ふりにけり  下村梅子

馬酔木咲き 己れの奥に 歩み入る  榎本好宏

父母に 便り怠り 馬酔木咲く  加倉井秋を

花馬酔木 主婦の財布に 鈴一つ  堀内幸丸

宮裏に 日だまりのあり 花馬酔木  石谷秀子

花あしび 昔女帝の おはしけり  阿片瓢郎

野の宮の 風の馬酔木の 房みじか  山口いさを

立眠る 衛士やなだるる 花馬酔木  六本和子

馬酔木咲く 星を小出しに 繭の村  田部井利夫

そこここに 雨後のときめき 花馬酔木  名取思郷

時流れ 風流れをり 花馬酔木  村沢夏風

あしび垂れ 寄せ木板積む 女の手  古沢太穂

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